阪神・淡路大震災から今年で25年目の1月17日を迎えました。
当時は私も設計の仕事を始めて間もない頃、普段の仕事から耐震に対する認識はもちろん持っていましたが、あの大震災による被害を目の当たりにし、それまでと同じ考え方でいいのか?と自問する機会となりました。
設計の仕事は、美しい建物を設計することであり、機能的な建物を設計することでもあります。
ただ、それは表に見える部分。
優れた設計は、見えないところで耐震性にも優れた安心して生活できる建物でなければなりません。
阪神・淡路大震災以前だけでなくそれ以降も、日本では大きな地震があちこちで起きています。
東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震、そして大阪北部でも大きな地震がありました。
仕事柄、被災地での建物の被災レポートを目にする機会が多くあります。
地震で壊れた建物を数多く見ているということになると、その分耐震に対する意識は強くなるというわけです。
ところが未だに、日本の住宅では構造の強度の計算は実質しなくても、簡易的な計算だけでも良いことになっています。
これでは、大きな地震に耐えることはできません。
根幹となる法律である建築基準法では、国民の生命、健康、財産の保護のための最低基準となっています。
あくまで最低基準。
数百年に一度の地震で倒壊しなければ良いとされています。
倒壊しなくても、全壊であっても倒れない強度があればOKという解釈もできてしまう訳です。
耐震性、本当にそれでいいの?
熊本地震の建物被災レポートを見ると、
2000年以降に建てられた比較的新しい住宅の中で、調査範囲の中で無被害で住んだ建物と一部損壊以上の被害を受けた建物の割合は2:1程度となっています。
つまり、概ね30%の建物は被害を受け、中でも全壊、倒壊は6%あったということです。
これまで家づくりのお手伝いをしてきた中で、ご自身の住まいに対して、耐震性を良くしなくても良い、と言われる方はいらっしゃいません。
でも、どこまでするか?と聞かれたら常識の範囲内で、と答えられる方が大半です。
建てる側も、わざと地震で壊れる家を建てようとする業者はいないと思いますが、業者側もどれくらいが良い、という明確な答えを持っていないところも多くあります。
耐震性を良くすれば、当然コストも上がります。
業者側はコストが上がるくらいなら、建築基準法どおり最低限でもやっておけば大丈夫という思い込みもあります。
家を建てる方も、コストがかかるのは将来の地震に備える為に必要という認識を持っていただいたほうが良いでしょう。
では、どれくらいにすればいいの?
という疑問が出てくるかと思います。
いま、住宅を建てる側で、耐震性能を良くするという認識でされている方の多くは、耐震等級3という基準をクリアするのが妥当とかんがえているところが多いです。
耐震等級3とは、建築基準法での基準の1.5倍の強度を持っているという基準になります。
先程の熊本地震でのレポートによると、耐震等級3の住宅が16棟あり、その中で半壊、一部損壊が2棟、無被害が14棟で、87.5%が無被害であったということです。
この熊本地震のレポートは、一般の方向けにもわかりやすく出されています。
是非一度読んでみてください。
https://sapj.or.jp/wp-content/uploads/2017/01/taishintoukyu3_susume.pdf
耐震等級3にすると費用はどれくらい増えるのか?というと、揺れに耐えるために壁が多くなったり、接続金物が多く必要になります。
規模や間取りにもよりますが、100万円UPするか?というとそこまではかかりません。
それよりも、耐震性がよくなる間取りで大幅なコストアップを避ける方法もあります。
地震多発期に入ったと言われる日本。
これから家を建てられる方は、耐震等級3を一つの基準に家づくりを考えてみることをおすすめします